ギャラリーテラ京都

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京都・清滝にある古民家ギャラリーテラ清滝と、竹紙竹筆専門店テラ西陣のブログです。
ラオス竹紙の旅20 2/17
 2月17日、この日もナムディ村に出かけた。

この日の目的は、ひとつは前日にヨワートさんと一緒に漉いた竹紙を干したままで帰ったので、それをもらいにいくこと。そしてもうひとつは、祭礼を終えたシンヘットさんに、もう一度会いたかったのだ。
昨日は結局シンヘットさん兄弟は、その後も親戚や長老へのあいさつがずっと続いていて、話す時間はまったくなかった。ひと言、言葉を交わしておめでとうと言いたかった。

家をのぞくと、シンヘットさんいた!
伝統の民族衣装をまとい、晴れやかな顔だ。
「おめでとう!」と声をかけると
「来てくれていたんだね! ずっと狭い部屋に閉じこもっていたから、まわりのことは何もわからなくて、来ていないのかと思っていたよ」と言う。
こちらは式の様子をつぶさに見ていて、彼が外に出てきた様子も見守っていたのだけれど、緊張して式に臨んでいた彼は、まったく気がついていなかったらしい。
確かに、すごい真剣な表情でまわりもちらりとも見ていなかったもの。シンヘットさん、まじめなんだな。

「どう?今の気持は?」と尋ねると、
「つらかった!すごく疲れたけれど、今は大人になってとてもうれしい!」との返事。
これがシンヘットさん兄弟とお父さんとお母さん

しかし、式は終わったものの、まだすべてが終わったわけではない。
式に参加し、立ち会ってくれた人々に、一人一人お礼を言い、あいさつをして、お酒をついで回っている。

お父さんやおじいさんが、私たちに「式に参列してお酒を酌み交わした人はみな親戚になったのだから、ご飯を一緒に食べていくように」と誘ってくれる。
毎日ごちそうになりっぱなしでは悪いし、今日はすぐ失礼しようと思っていたのだけれど、ニットさんが「せっかくああ言ってくれているし、お祝いの席だから一緒に食べていきましょう」と言う。
それではとまたまた席に着く。

今日は暗い土間に、数十人の人々が座っている。
ごちそうの豚がさばかれて、土間の中にも肉が吊るされている。
村人達の家々にも、ふるまいの豚の足や肉が運ばれている。

いつもは決して男性達と一緒の席に着かずに、裏方をつとめてきたシンヘットさんのお母さんが、祝いの席に座っているのであれっと思う。
みなが席に着いたところで、長い1本の手紡ぎの木綿糸が、席に座った数十人の人々の間に回され始めた。みなが木綿糸を手に持ち、宴席を糸が回っていく。
ぐるりと一周回り切ったところで、村長が祈りの言葉を唱え始めた。村長は低い祈りの声とともに、回っていた木綿糸をゆっくりとお母さんの手首に巻き付けていく。
そして、木綿糸がみなの手を離れ、すべての糸がお母さんの手首に巻き取られた時、祈りの言葉は終わった。
それが祝宴のはじまりだった。

とても美しい光景だった。

祈りの言葉の意味はわからなかったが、その行為の持つ意味は感じとれた。
ここに立ち会った人は、1本の糸で縁を結ばれ、成人したシンヘットさんを祝福し、今後を見守っていくのだろう。
若者は立ち上がり旅立っていく。
でも、その源には確かにおかあさんがいる。

大きな文化の違いを持つように思えるレンテン族の暮らしも、その底に流れるものは私たちと変わらず、同じなのだと思った。

3日間の祭礼儀式は、薄暗い部屋やきついお酒や血や火や踊りとあいまって、なんだか幻のようにも思えていた。夢か現か定かでないような気もしていた。
でも、このとき、幻は実像となって、はっきり私の心に焼き付いた。

私はこの日のこの光景をけっして忘れないだろう。
なんだか涙が出てくるような美しく暖かい光景だった。


それからは祝宴だった。みな、食べて飲んで、陽気な祝いの席だったが、シンヘットさん兄弟は律儀にみなの席を回り、お酒をついて回っていた。
その順番が彼らのおじいさんのところに来た。
80歳になるおじいさんは、孫の杯を受けながら、ゆっくりと説いて聞かせるように二人に何かを話しかけていた。シンヘットさんも何度もうなずきながらその言葉に耳を傾けていた。
老人には若者に伝えるべきことがあり、若者には老人から学ぶべきことがある。

レンテンの世界はまだまだ生きていて健全な社会だなあと思った。

そのあと、おじいさんは、中華丼ぶりの鉢になみなみと入った豚の生血を、私たちに飲むようにと勧めてくれた。「おいしいですぞ。飲みなされ」と。
でもごめん、それだけはちょっと飲めませんでした。
すると、おじいさん、「そうですか、悪いですなあ、では遠慮なくワシがいただくとしますか」と丁寧に回りを気遣いつつ、中華スープを飲むレンゲで生血をすくい、ずずず〜っとすすり上げて飲み干し、歯の抜けた口をほころばせて満足そうに微笑むのでありました。


シンヘットさん兄弟が着ているのがレンテンの男性の民族衣装
お母さんの着ているのが女性の民族衣装

お祝いにナムゲ村のラオス焼酎と日本から持ってきたお菓子を渡しました。

シンヘットさん、弟さん、成人おめでとう!
これからはどこへでも行けるし結婚もできる。
精霊はあなた達の味方となり、あなた達を支えてくれるだろう。
ふたりはレンテンの歴史と文化をになう、たくましい大人になることでしょう。

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