2011.03.07 Monday
ラオス竹紙の旅記録17
またまたお酒が振る舞われる。
例の45度のラオス米焼酎だ。
もうだめです、飲めません、と言おうとしたが、
村の人は「これは親戚がみな飲むお酒ですから飲んでください」という。
ニットさんが
「親戚が皆飲むお酒をすすめてくれているんです。少しだけ飲んだらどうですか?」
というので、ちょっとだけグラスに口をつける。すると村人、
「全部飲み干さなければだめです」とのジェスチャー。
ええ〜っと思いながら必死でグラスを空にする。
と、「もう一杯」と言うではないか。もう無理無理、と言ったのに、どうも「式を受ける若者は二人ですから2回飲まなくてはいけない」と言っているようだ。
ええい、もう飲んでしまえ〜、とついに2杯とも飲み干した。
身体がカア〜っとしてくる。でも、なんだか混ざり物がないせいか、度数が高くて純度が高いのか、悪酔いする気はしない。
酔い覚ましに外に出る。
暗い室内から一歩出ると、抜けるような青空だ。
家に近い場所に、青竹が高く掲げられ、そこに長細い竹紙がはためいていた。
何が書いてあるの?と聞くと、他の村の精霊の名前が書いてあるのだそうだ。
他の村の精霊も式に招待されている。でも他の村の精霊は室内には入れないので外に招待しているのだとのことだった。
外でシンヘットさんのおばあさんが竹紙を使って何かをしている。
実はその作業は、昨日から同じ場所で黙々と続けられており、夫が「いったい何をしているんだろう?ずっと同じことをし続けているけど、何をしているのかさっぱりわからん」とささやいていたのだった。
おばあさんは竹紙を切ったり貼ったりする作業を、だまって黙々と延々とし続けているのだった。
とうとうニットさんに聞いてもらった。
「おばあさん、何をしているのですか?」
「精霊へのお土産を用意しているんです」
「は、おみやげ?」
「はい、竹紙で作ったお金と竹紙で作った服です。それをひとりの精霊に10枚ずつあげられるように用意し、竹紙の袋に入れて、来てくれた精霊たちに差し上げるのです」
ヒャ〜、おばあさん、孫の式に来てくれる精霊たちへのお土産を作っていたのですか?たくさん来る精霊たちの分をみな用意すべく、こうして黙々と作り続けていたのね。
よく見ると、ちゃんとレンテン族の衣装みたいな竹紙の服、そして竹紙の紙幣、それを入れるための竹紙の手提げバッグもある。
おばあちゃんの袋入れを手伝っている手はニットさん。ニットさん、こういう時に見たり話したりするだけでなく、誰にでもちょっと手を貸してあげるんだよね。本人はきっとあまり気にしていないだろうけど、それってすごいなと何度も思った。
バッグは、確かに村人たちがよく肩からかけている肩掛けバッグの形をしている。しかも簡単にではあるが、ちくちくと木綿の糸で端を縫って仕上げているではないか。バッグができると、それまでに作った紙幣や服を詰めている。時々縫う場所を間違えて底抜けになっていたりすることもあり、それに気がつくと、おばあちゃん、おかしそうに笑ったりしているのだった。
ああ、おばあちゃん、きっとシンヘットさん喜ぶね。
最初に来た日、シンヘットさんは、私たちにおじいさんおばあさんの家もちゃんと案内してくれて、紹介もしてくれていたんだ。
年寄りは若い人のためにしてあげられることが確かにあり、若者たちも、年寄りから学んだり、敬うべきことが確かにある。
話を聞いて、なんかいいなあ、と思った。
そのすぐ近くで
犬と豚が追いかけっこをしている。その後ろには綿花を扱う女性達の姿。
竹紙が燃やされたりして、外でも少しずつ儀式がすすんでいる。
そして、私たちはまたご飯をごちそうになる。
今日はうるち米のご飯だ。
これはおひつ。シンヘットさんのお母さんが、「ご飯を食べ残す人なんか、つぎの食事に呼ばないわよ」というので、一粒残らず食べる。もちろん、そういわれなくてもみんな山盛りご飯をもりもり食べている。
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